米連邦地裁は5日、米グーグルがインターネット検索をめぐって違法な独占状態にあると認定した。巨大IT企業の「権力」の根幹に関わる判断で、今後の事業のあり方や、デジタル空間の競争環境に大きな影響を与える可能性がある。
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グーグルは検索で圧倒的なシェアを誇る。判決によると、2020年の段階で全検索の約9割を占めた。スマートフォンなどの携帯機器に限ると95%に近かった。英語でも「ググる」は動詞として使われ、「検索する」と同義語だ。
巨額の契約を問題視
判決はその理由として「最も質が高い検索エンジンを提供している」と認め、優れた人材を集め、賢明な経営判断を続けきたグーグルを評価した。ただ、「ライバルと比べ利点があまり見えないものもある。初期設定だ」とも述べた。
グーグルはアップルやサムスンなどと契約を結び、お金を払う代わりにブラウザーやスマホなどで初期設定の検索エンジンとしてもらっている。多くのユーザーが初期設定のままで使うため、グーグルの検索に伴う広告収入は21年には1460億ドル(約21.3兆円)に達した。
そのための支出もかさむ。21年には初期設定を維持するための対価が263億ドル(約3.8兆円)に上り、グーグルとして最大の費用となった。なかでも重要なのはアップルとの関係で、22年には推定200億ドル(約2.9兆円)を支払った。
判決が問題としたのはこうした契約だった。グーグル元幹部による「契約金の支払いは、変化を困難にする」という証言を重視し、アップルなどが初期設定の検索エンジンを変えたり、契約条件を変更したりすることも検討しながら、「グーグルからの巨額収入を失うことになり、断念している」とし、グーグルの独占に重要な役割を果たしていると判断した。
一方、ライバルのマイクロソフト(MS)が開発した検索エンジン「ビング」のシェアは約5%で、グーグルに遠く及ばない。MSはアップルに初期設定のエンジンとして採用してもらうことももちかけているが、交渉は難航。判決によると、アップル幹部は「MSがどんな金額を提示しても受けない」と述べたという。
判決はMSのブラウザー「エッジ」ではビングが初期設定され、検索の80%に使われていると指摘。他のブラウザーなどでグーグルが初期設定を独占していることが、新規参入を妨げている証拠の一つとした。
グーグルは声明で「我々の検索エンジンが最も優れていると認めながら、容易に使えるように提供すべきではないと結論づけている」と皮肉った。判決がグーグルを高く評価した箇所を引用しながら、控訴する意向を表明した。(ニューヨーク=中井大助)
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